読書◇『太陽のパスタ、豆のスープ』
『太陽のパスタ、豆のスープ』/宮下奈都
失恋したことをきっかけに読みました。
感想の前に、失恋の定義ってなんだと思いますか?
好きな人にふられたこと。
恋人と別れたこと。
広辞苑によると
「恋する気持ちが相手にかなえられないこと。恋にやぶれること。」とあります。
何れにせよ、私は「特別な感情をもっている相手を喪失した」という意味で用いています。
◇
主人公のあすわちゃんは、結婚を目前にしていた彼から婚約破棄を言い渡された。
失意の中、叔母のロッカさんの提案によって
「ドリフターズ・リスト」を作る、
つまりやりたいことを書き連ね始める。
きれいになる、毎日鍋を使う、お神輿…
リストの内容は少しずつ増えたり、ときには消したり。
それを手掛かりにして、毎日を丁寧に、
そして自分で選び取りながら暮らしていくことの大切さに気づいていく。
前向きになれるお話です。
あすわちゃんが人間らしく、前進ばかりではなく、つまづいている描写も共感できて良い。
主人公以外の登場人物も大変魅力的です。
特に、あすわちゃんの兄が好きです。
のんびり暮らしているフリーターに見えて、
実は確固たる夢を追いながら生きている。
失恋したときに女性は美しくなると聞いたことがあります。今までの自分を見つめ直したり、変わりたいと思うきっかけになるからでしょうか。
美しくなるというのは、見た目に限ったことでなく
内面の美しさも含めて。
人それぞれ、美しさの定義は違うと思います。
私が思う「きれい」と、
主人公のあすわちゃんが思う「きれい」は
きっと違うし、
わたしのきれい と 以前付き合っていた彼にとってのきれい も、大きく違っていました。
彼にとってのきれい に近づこうとしていたあの頃の私は、頑張っていたけど苦しかったです。
わたしのきれい は、まだ明確に見つかってはいませんが、
少しずつ自分にとって大切なことに気づき、選び、
自分で自分を美しいと思えるようになりたいですね。
また読み返そう、と思える一冊でした。